居直り日記

深く考えずに書く

【遠征読書旅】京都・奈良 × 「イリノイ遠景近景」藤本和子

遠征読書旅に行ってきた。

以前↓に書いた「遠征読書旅」を敢行した。

 

nogami24.hateblo.jp

 

行先は京都と奈良。

用意した本

今回の旅にあたって以下の2冊を用意した。

旅行先である京都・奈良に関係がある本にしようかなとも思ったが、選択肢が膨大で決められなくなりそうだったので、以前から読もう読もうと思って読んでいなかったこの2冊にした。

交通手段

遠征読書旅とは「本を読むためにわざわざ鈍行列車に乗る」旅で、新幹線と特急は使わない。 そこで今回は「近鉄週末フリーパス」を使うことにした。

なんと、5,000円であらかじめ指定した金~日曜の3日間金~日曜もしくは土~月曜の3日間、近鉄の普通・急行が乗り放題という、遠征読書旅にはもってこいのきっぷなのだ!! どうしても特急に乗る必要があれば、特急券だけ追加すれば良い。

1日目 京都

そういえば最寄りの駅は無人駅だった

まあまあ田舎に住んでいるので、自宅からの最寄り駅は無人駅だ。自動改札なんていうものもない。簡易改札機があるだけ。

いつもはICカードを使っているのであまり考えたことがなかったが、こういう紙ベースのきっぷの場合、どうするのが正しいのか。

券面を見ると「自動改札機のない駅改札口では本券を係員にご呈示ください」というようなことが書いてある。しかし、いまから乗る電車で乗務員さんを見たことがないような…。

1本乗り換えたあとの電車には乗務員さんがいたので確認すると「あー、多分(多分?)普通に自動改札使えますので、入場のときに通していなくても京都で降りるときに通してもらって大丈夫ですよ」とのことでひと安心。

車中で読書

イリノイ遠景近景」を読む。

「十月のトニ」は、ワシントンに住む黒人女性の友人トニを著者が訪ねたときの様子を描いたものだ。このとき二人とも40代後半で、さらにトニは失業中なのだが、夜更けに簡易食堂でグリッツを食べたり、一緒に占い師に見てもらったりしてめちゃくちゃ楽しそう。

トニは白人社会で成功していたが、このままでは「自分が何者なのかわからない」と思い、いきなり勤務先の財団をやめてアフリカを旅してしまうような人だ。自由でたくましく、元気がいい。

「あら」とトニはいった。「ワシントンに引っ越してきなさいよ。それが正しい道というものよ。第一ここには、このあたしがいるんだから」
「そうよねえ」

(「イリノイ遠景近景」ちくま文庫 p.90)

この友人関係羨ましすぎる。

京セラ美術館

以前京都に住んでいたが、京セラ美術館には行ったことがなかったので、今回訪れてみることにした。 本当は京都国立博物館に行きたかったが、特別展の展示作業等のため10/6まで庭園しか入れないとのことで、やむなくスキップ。

企画展はパスして、[2024夏期]コレクションルーム 特集「女性が描く女性たち」を見る。

kyotocity-kyocera.museum

展示作品の点数が少ないような気がしたのは、興味のもてる作品が少なかったせいか。

といっても、109号室の「特集 女性が描く女性たち よそゆきの姿」は気分が明るくなるような色彩豊かな絵が多く、かなり良かった。 ポスターにも使われている秋野不矩「紅裳」のほかにも、由里本景子「望遠鏡」、丹羽阿樹子「遠矢」とか。

秋野不矩「紅裳」には、5人の若い女性がテーブルを囲んでぼんやり座っている様子が描かれている。柄はそれぞれ違うが、皆そろってピンク寄りの赤の着物を着ている。 友だちなのか他人なのか関係はわからないが、みんな目が死んでいるというか上の空で、所在なさ気な感じなのだがそれがなんかかわいらしい。

丹羽阿樹子「遠矢」は、若い女性が片膝をついて斜め45度上方向に弓を引き絞っているという力強い構図と、女性が身につけている花柄のワンピースの黄色と背景の緑が鮮やかで美しい。見ていると元気が出てくる。

ミュージアムショップでポストカードを購入するも、肝心の「遠矢」を買い忘れる。

六曜珈琲店

こちらも京都に住んでいたときに一度行ってみたいと思って行かずじまいだったので訪問。

1階は喫煙OK、地下は禁煙なので地下へ。店内はかなり狭い。カウンター席とテーブル席があリ、カウンター席の後ろを通るときには体を横向きにする必要があるくらい。

アイスコーヒーと、名物(?)らしいドーナツ(200円)を注文。

「温かいうちにどうぞー」という言葉とともに提供されるこのドーナツが、食べた瞬間「うわっこれ子どものときに母親が作ってくれたやつだ!」となるタイプの味と食感で、なんというか素朴極まる風味なのだ。溢れ出るホームメイド感。なつかしい!!

甘さも控えめで、トッピングなどなにもない。素ドーナツだ。ミスドのドーナツが甘すぎてNGという人も、これなら美味しく食べられると思う。

食べながら、そういえば母親が作ってくれるとき、きれいな輪っか状に絞り出すための道具を使ってたなーと思い出した。なんか生協で買ったんじゃなかったかなーまだ売ってんのかなーと思ったら普通にAmazonで売られていた。

Madre (マドーレ) 「ドーナツメーカー」 FP-310

↑こういうやつ。

イリノイ遠景近景」にも喫茶店のエピソードが出てくる。その名も「昔ながらのドーナッツ屋(オールド・ドーナッツ・ショップ)」。

いつも常連客たちがいて、ドーナッツとコーヒーを食べながらお互いに情報交換をしている。客は皆65歳から80歳、「そろって毎日の労働から開放された退職者たちだ」。

ーしかし毎日毎日見る顔がこう決まってるんじゃ、ちょっと退屈でもあるな。
ー退屈だって女房の顔見てるよりはましだ。来年でおれは結婚五十五年だぞ。
ーそんな歳かい、あんたは? もう八十か?

(「イリノイ遠景近景」ちくま文庫 p.39)

アメリカに限らず、外国の映画を見ているとよくこういう「退職後にだべっている老人男性たち」が出てくる。場所は公園だったり理髪店だったり道端だったりと様々だが、目にするたびに私もこんな老後を送りたいと思う。気のおけない人たちと毎日しょーもない話をして暮らすのだ。

六曜珈琲店は店内暗めで、どっちかっていうと読書には不向き。

rokuyosha-coffee.com

丸善 京都本店(京都BAL)

丸善はサイズが良い。地下1階と2階だけの程よい大きさ。巨大な書店も好きだが、目的もなくぷらっと行って時間をつぶすのにはこのくらいが最適。

地下2階にはMARUZEN caféがある。いつもハヤシライス? カレー? のいい匂いが漂っているので、お腹が空いてなくても立ち寄りたくなってしまう。

このカレーの匂い、本に染み付いたりしないのかいつも気になる。取次とか出版社とかで「あっ!京都の丸善からの返品だ!カレーの匂いするし!!」とか言われたりしてないだろうか。

ファーストキャビン京都二条城

ホテルはカプセルだ。どうせ寝るだけだし。

初めて体験したカプセルホテルはマヤホテル京都で、なかなか快適だったので今回も利用しようと思ったがいつの間にか閉館していた。

しかしこのファーストキャビン京都二条城も良かった。女性専用フロアがあり、大浴場もある。大浴場って言ってもまあ小さいんだけど、ゆっくり湯船につかれるのは嬉しい。

first-cabin.jp

2日目 京都→奈良

コロラドコーヒーショップ マスサン

Flip up! でベーグルでも買って京都御苑で朝ご飯もいいかなーと思っていたが、なんとなく湿度が高くて若干蒸し暑い気がしたので、近くの喫茶店でモーニング。

ハムとスクランブルエッグ、サラダとトースト、コーヒーのモーニングは結構ボリュームがある。コーヒーは酸味より苦みが強めで美味しい。

BGMはクラシックで、古き良き喫茶店といった風情。

店内は明るくて居心地良く読書向きだが、時間制限がある的なお断りがお店の入口にあった気がするので(詳しく覚えていない)、調子にのって長居はNG。

橿原神宮

過去の奈良旅行はいつも奈良公園止まりだったので、今回は橿原神宮まで足を伸ばす。

橿原神宮前駅を出ると、見慣れない色のポストが目についた。黄色だ。「幸せの黄色いポスト」というものらしい。

平成28年10月に橿原市宮崎市との姉妹都市盟約締結50周年を記念し、近鉄橿原神宮前駅中央口前に、幸せを願う黄色いポストが設置されました。 ここから手紙を投函すると、届いた相手にも幸せが届くと言われています。

kashihara-kanko.or.jp

いやいや……なにを根拠に……などと言ってはいけない。次に訪れるときには幸せになって欲しい人への手紙を持ってこよう。

橿原神宮は堂々とした立派な神社だった。しかし私が気になったのは参道の左右に連なる燈籠だ。

結構な数の燈籠が並んでいてそれぞれに「奉献」のプレートが貼られている。そのプレートに奉納した人の名前に並んで、金額もしっかり入っているのだ。

生々しい。

私が知らないだけで、もしかして金額も書くのが一般的なのだろうか。いままで神社を訪れたときには目に入っていなかっただけなのか。

相場は100万~150万らしい。300万というのもいくつかある。やはり橿原、奈良県内の人が多く、あとは関西圏がちらほら。

本殿の向かって左手には池があり、ベンチもある。季節によっては読書もいいかもしれない。種類はわからないが水鳥もいてのどかな空気だ。

kashiharajingu.or.jp

ギャラリーカフェnarairo

帰り道、パフェが唐突に食べたくなり、駅までの道沿いにあったこちらのお店に立ち寄る。

バスクチーズのロックパフェを食べる。アイスは入っておらず、バスクチーズケーキとクリーム、あっさりしたゼリー、ゆず風味のソース?で構成されている。美味しい。

こじんまりとした、清潔で感じの良いお店だった。

遠征読書旅は楽しい

旅行中、電車内で座れないということが一度もなかったのが良かった。さすがに長距離立ちっぱなしで読書は厳しい。

今回は別の用事もあって宿泊したが、基本的には日帰りが良さそう。日帰りなら本と財布があればどうにかなるのでかなり身軽になる。

フリーきっぷがあったのも大きい。結構な移動距離を、気が向いたところで降りて乗って、というのが運賃を気にせずできるのは良い。「近鉄週末フリーパス」は連続3日間、指定日限定だが、これの1日版があったらいいなーと思った、1,500円とか2,000円位で。

本は2冊持っていったものの、旅行中に読み終わったのは「イリノイ遠景近景」だけだった。