居直り日記

深く考えずに書く

【映画】「最高殊勲夫人」| 楽しいコメディだが、いろいろ厳しい部分もあり

原作は源氏鶏太、昭和のサラリーマン映画である。男も女もみんなびっくりするほどストレートにものを言うのがさっぱりしていて良い。それに加え、女性が凄く積極的なのも良い。

彼女たちは自覚的に「未来の夫を見つけるために『ビジネスガール』をやっている」のだから当然だが、狙った男にはばんばん声をかけ、デートに誘う。札幌に転勤になった意中の男性社員に「私寒さに強いし、札幌にぴったり!」と訳のわからない理屈でぐいぐい迫るビジネスガール、好感が持てる。

他のビジネスガールたちも無邪気でかわいい。「頼みを聞いてくれたら、食堂の支那饅頭おごるわ」と、饅頭で若尾文子を釣ろうとするビジネスガールと、すかさず「あんまんと肉まんと両方ね!」と返す若尾文子。このころは中華まんのことを支那饅頭と呼んでいたという知識も得た、どうでも良いが…。

女性たちのファッションも見ていて楽しい。丹阿弥谷津子のマダム風なコート(?)、若尾文子の浅めのグレーのVネックニットを赤いベルトで締めて下はタイトスカート、襟元にはブローチ、とか。

ところで、ビジネスガールの中に一人、日本人らしからぬ華やかな顔立ちをした女性がいるので気になって調べたのだが、市田ひろみだった。 ヨーロッパの女優っぽい、くっきりした目力の強い顔だち。歳をとってからの「いつも着物を着ている人」という印象しかなかったので驚いた。

船越英二は恐妻家の会社社長を演じている。妻に頭が上がらないことに不満をいだきつつも強く出ることができない金持ちのボンボンで、浮気が妻にバレるのを異常に恐れている。浮気がバレたと思いこんだ時の即土下座が笑える。

大島商事社長夫人役の東山千栄子が、すべてのシーンで同じ表情なのも面白い。冒頭の結婚式でのシーンでも、若尾文子の姉が彼女を訪問するシーンでも、全部同じ顔。いかにも金持ち夫人といった余裕である。人の話聞いてないし。

楽しいコメディだが、流石に登場人物たちの言動がシンプルすぎてリアリティに欠ける。また、昭和の映画なので、現代の尺度で見るとやはり色々厳しいポイントがあり、みててヒヤッとする。「逆らう女は殴ってしまえ」的なセリフがカジュアルに出てくるところとか。そうは言っても実際に殴りはしないのだが。

あと、金持ち界隈の人間の、女中さんやお手伝いさんに対する態度が尊大なのにも引く。基本的に男性は彼らに対して「おい」呼ばわりである。金持ち界隈に知り合いがいないのでわからないが、これは現代でもそうなのかも。