居直り日記

深く考えずに書く

【ドラマ】「プロット・アゲンスト・アメリカ」| 原作が良すぎたか


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David Simon, Ed Burns が脚本ということで期待して観たが、残念ながらいまいち。決して悪くはない。が、原作を読んでしまった後ではあまりにも物足りない。

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6エピソードのミニシリーズでは時間が足りなすぎたのではないだろうか。原作を読む前に、何も知らずにこっちを先に観ていたら、結構いいドラマじゃないのと思ったかもしれない。

ストーリーそのものは、ある程度改変はあるものの、ちゃんと面白さを保っている。が、当然ながら、ストーリーの進行に直接関係のないエピソードや人物描写は削られている。

例えば、フィリップがバスルームから出られなくなったときの、セルドンの母セルマが見せた「母親」らしい振る舞い。この一件があるからこそ、フィリップが彼女の死を招くきっかけを作ってしまったという事実の残酷さが際立つのだが、ドラマには出てこない。

というか、このドラマではセルマという人物の扱いはとても小さい。他にも、「私たちの」ククッツァ一家と「あっちの」ククッツァ一家、一家の「頬ひげの生えたおばあさん」の描写など、そういった細部の積み重ねこそが、少なくとも私にとっては作品世界への共感というか愛着を呼び起こす要因となるのだが、これもまたドラマにはない(ミスタ・ククッツァは出てくるが、背景は語られない)。

俳優はとても良い。エヴリンを演じたウィノナ・ライダーの、どう言ったらいいのか、なんとはなしにぎこちない、作ったような表情。役柄の持つ不安定さのようなものを、微かに、でも確かに感じさせる演技とでもいうか。

ベス役のゾーイ・カザンもまた良い。こっちはウィノナ・ライダーとは対照的に、不穏な世間の空気に怯えながらも芯は揺らがない、地に足のついた主婦を好演している。

"The Wire" の悪徳弁護士レヴィ役でおなじみ、マイケル・コストロフもシェプシー・ターシュウェル役で出演。ジョン・タトゥーロはちょっとベンゲルズドーフのイメージとは違ったかなと。

ベンゲルズドーフといえば、最終話での記者会見時に彼に質問を飛ばすリポーターはDavid Simon だろうか。