居直り日記

深く考えずに書く

【映画】「満員電車」| 「サラリーマンは気楽な稼業」ってわけでもなかったらしい

市川崑のシュールなブラックコメディ。公開は1957年とのことだが、この頃の日本は深刻な就職難だったようだ。

映画では、優秀な大学を卒業した川口浩が大手メーカー「らくだビール」に就職するも、紆余曲折あり首になる。

再就職先を探すべく職安に出向くが、職を求める人でごった返している。大卒であることがかえって就職の邪魔になるため、学歴を偽って小学校の「小遣い」の職にありつくも、嘘がバレて結局また首に。最終的にはボロい掘っ立て小屋で学習塾を開くことにする。

笠智衆演じる川口浩の父親は、正しさ、合理性などを信奉し実行する男であり、言うことはご尤もなのだが、家業の時計屋の壁一面にかかった掛け時計のイメージなど、なにか狂っている雰囲気が漂う。

同僚の船越英二(サラリーマンは休まず働かずですよ、みたいな処世術を語りつつ、実はこっそり会計士の勉強をしている)の浮世離れした雰囲気も、効率よく仕事をする川口浩を嗜める上司も(「仕事のスケジュールが狂うから」という理由で)、川口浩を取り巻く状況すべてが奇妙で歪んでいる。というか、当の川口浩もちょっと変なのだが。

日本におけるサラリーマン生活の不条理とか滑稽さなんていうのは、すでにこの時代から意識されていたことなのだというのがわかって興味深い。ジャケットだけ見るとロマンティック・コメディのようだが、一切そういう話ではなかった。ジャケ写詐欺。